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リア充高校生が、絵を描く悦びを知り藝大現役合格を目指す「ブルーピリオド」

私はアニメや漫画が好きです。小説やドラマ、映画も好きですが、それらにかける時間はたぶん人並み以下。でも漫画やアニメにはたぶん人より少しだけ時間をかけて楽しんでいると思います。この「geek」記事では、そんな私のお気に入りの漫画やアニメの面白さを書き溜めていければなと。なんか面白いのないかなと探しているときにでも読んでもらえたら、新しい世界への出会いのきっかけになるかもしれません。初回の今日は漫画作品なので、電子書籍で試し読みするもよし、帰りに本屋で大人買いするもよし。お好きにお楽しみください。

「絵を描く楽しさ=言葉じゃない言語で感情を表現する面白さ」を知った主人公

  • タイトル:ブルーピリオド(Booklive
  • 作者:山口つばさ(Twitter
  • 掲載誌:月刊アフタヌーン(講談社)
  • 既刊:6巻(現在も連載中)

この作品は今年の夏頃にインスタでフォローしている方が投稿されてて、一目惚れして一気読みしたもの。あらすじとしては、学校の勉強も人付き合いも得意で、人生なんでも「うまく」やってきた高校生の主人公・矢口八虎(やぐち やとら)が、絵を描くことで表現することの楽しさにハマり、現役合格倍率200倍と言われる東京藝術大学・絵画科への現役合格を目指す、といった物語です。

絵を描くようになるまでの八虎は、自分の感情をはっきり主張することなく、空気を読みつつ場を盛り上げるのが上手なキャラで、でもそんな自分にどこか満たされない生活を送っていた。そんなとき学校の美術の授業の中で、絵に自分の感情を乗せて描くことの楽しさを知り、そこから本気で絵に取り組みだし、藝大を目指すことを決意します。

今日はそんな「ブルーピリオド」の好きなところを、好きなセリフと合わせて綴ってみようと思います。本当はたくさんたくさん紹介したいシーンがあるのに、文章が長すぎても重いなと、何日も考えて書いて直して3シーンに限定しました。それではレッツゴー!

「才能なんかないよ。絵のこと考えてる時間が他の人より多いだけ」

第一話、美術部の森先輩に言われた言葉。これをきっかけに絵を描くことに興味を持ち始めます。

八虎の美術への興味を深めるきっかけになった美術部の森先輩がぼそっとこぼすこの言葉。絵が上手な人って漠然と、センスがあるとか、絵心があるとか、そういう「ふわっと」した言葉でまとめられがちだけど、実際はそれだけじゃなくて、上手な絵を描くために必要なことをたくさん勉強して実践して考える。そういうことに人より時間を使っている、だから描けるんだ、って。特別な「才能」じゃなく「理論」があるんだってことが、当たり前だけど身近に感じられる場面でした。

作者の山口つばささんが東京藝大の出身ということもあって、作中でもデッサンや油絵のこと、構図や絵作り、また美大や予備校のことなど、美術に関するたくさんの知識が出てきます。作中に出てくるキャラクターが描く絵も、実際に美大生や美術関係の協力者さんたちが描いたもので、生感ハンパないです。読者に予備知識を解説する系のくだりは単調になりがちですが、主人公がそれらを一つ一つ身につけながら成長する過程と絡めて語られるので、読んでいて自分にも入っていく心地良さを感じました。私自身、絵を上手に描くことに抵抗というか、ハードルの高さを感じていて、でもこのシーンを読んで、描くことに対してリアルに背中を押されました。

「悔しいと思うならまだ戦えるね」

八虎は予備校のはじめての授業で「天才」といえるような人物と出会って、自分との力の差に悔しがります。そんなに彼に向けられた一言です。作中何度も、自分はただの人だ、という台詞が登場するのですが、主人公は一貫して「自分の平凡さ」を自覚しています。だからこそ天才と肩を並べるためにどうするか必死に考えて試し、武器を磨いて戦略を練る。その姿勢にいつもハッとさせられます。

自分より上手な人がいるからって、それを諦めたりする理由にはならない。だって自分も負けないくらいそれが楽しくて好きだから。どんな絵だってその人の絵はその人にしか描けないし、自分の絵だって自分にしか描けない。だから努力する、インプットする。伝えるためにどうするか考えて、試して、できるようになったら深めたり、また次の技術を会得して武器を増やして。劇中はその繰り返しで、読むたびに「ああこれって日常生活でも仕事でも趣味でも、本気でやっていると同じだな」と。トライアンドエラーこそ強くなる秘訣というか。

「かっこいいもんは世界に無限にある。俺がそれに気付けなかっただけなんだ」

絵についてたくさんのことを学び吸収してきた八虎。受験直前に初詣にでかけた先で、街の看板や人の持ち物、塗装やサビの質感などのありふれた景色のかっこよさに気付きます。無意識のうちに景色をトレースして自分ならどう描くか考える姿は、絵を描くようになる前や、ただ描いて技術を追うだけだった頃には無かったものでした。

何か新しいことを始めたり、知識を深めて自分のものにしたりしていくと、今まで気にも留めなかったことがふと面白く感じるようになってくる快感は、飛び込んでみないとわからないこと。八虎の場合は絵を描くことですが、それ自体の面白さだけじゃなく、過程を通して見えてくる副産物的な楽しさを体験すると、そこからさらに新しい興味が湧いたり、体験が広がることもあるので、「やってみる」ことってやめられないよな〜と思います。

3シーンと言いながら、ここだけはどうしても好きなので書きます!

「ブルーピリオド」の表紙はどの巻も共通して、登場人物が変わりばんこで絵を描いている姿がピンで描かれています。その色合いと表情、構図、勢い全部にブルッと来るんですが、一番カッコいいと思うのは全員がこっちを見つめて筆を走らせているところ。キャンバスに向かって描いている様子を、まるで透明な絵の裏側からのぞいているような、そんな視点で描かれているんです。

絵を描く人を描こうとすると、後ろ姿や横向き、上からなど中々正面を描写することは出来ない気がしますが、この仕掛けで全員がキャンバスに向かってぶつける感情みたいなものまで描かれているように思えて、最高にクールだなと。人と筆とタイトル以外の要素もなく、そのシンプルさがより人物の絵に対する姿勢を際立たせているような気さえします。全部並べて部屋に飾りたい。

とまあ、「geek」の初回でしたが、いや〜大変でした。どの作品にするかもそうだし、何を書くか、どこを切り取るか、決められない。好きな作品って好きなことろがたくさんあるから絞れなくて苦しかったです。今単行本は物語的に一区切りついています。6巻とすぐ読めるボリュームだし、電子書籍は無料キャンペーンをしているサイトもあるようです。ちなみに私がいつも利用しているのはBookliveです。こちらは11月28日まで1巻無料のようです。

次の「geek」記事は、アニメについて書きたいな。候補が多すぎてまた難儀しそうですが、それは幸せな辛さとして楽しく書けたらと思います。では、また。

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